雪が解け、若葉の緑も次第に色を増す頃。広大なお庭で家庭菜園や果樹づくりを楽しむU様にお話をお聞きしました。
落ち着きのある佇まいの家の中に入れば、杉材の床板や、通り土間のあるちょっと懐かしい雰囲気。
U様がここで暮らしはじめて、6年の月日が経ちました。
U様との出会いは、「購入を検討している土地があるので一度見てほしい」という1本のお電話でした。
早速伺ってみると、そこは600坪もの広い土地。しかしそこには木々や竹林が生い茂り、大きな古家と、前の住人のたくさんの物が残されていました。
当時、U様ご家族は勤務先で用意されたアパートにお住まいでした。お子様が大きくなるにつれ手狭になり、土地を探していたところ、よく通る道沿いにあったこの土地にたどり着きました。
「家の周りに"土"のある土地を探していたんです。庭や、家庭菜園をやりたくて。不動産屋へも行ってみたのですが、ちょうど良い大きさの土地が見つからなかったんです。それでふと、よく通る道沿いに気になる土地があったのを思い出して、近所の方に持ち主さんがどなたか聞いてみました。するといくつものご縁がつながり、この土地を譲ってもらえることになったんです。」
しかしこの土地に家を建てるためには、木々の伐採、古家の解体と前の住人の物の整理・処分が必要で、相当な時間と費用がかかることは明らかでした。
それでもU様は、「1年くらいかけるつもりで、自分たちでできるところまで片付けてみます。」との当初の言葉通り、数か月後にはその土地をきれいにしました。ご家族で力を合わせ、楽しみながらコツコツと残物を片付け、木々を切り、土を耕されたそうです。
「家を建てることをそれほど急いでいなかったので、何事も気持ちに余裕をもちながら進めました。住宅会社の見学会もたくさん見に行って、それぞれの社長さんや営業の方とお話をさせていただいたんですよね。
片建設さんに問い合わせたきっかけは、見学会のチラシの『先祖が植えてくれた木を使って家を建てた』という話が目に留まったことです。建て主さんの熱い喜びの声にひかれて連絡をしました。早速社長さんと営業の服部さんに会って話をして・・・その時は一度も片建設さんで建てた家を見ていませんでしたが、直感的にここだ!と思ったんですよね。」
南北に設けた趣味の部屋と和室。自転車をメンテナンスする趣味の部屋には古家のケヤキ梁を、そして和室にはらんまを設え、落ち着きのある空間に。
U様の希望する家のイメージは、「新しいけど、老舗のおそば屋さんみたいな家」でした。ちょっと懐かしい雰囲気の、ほっと落ち着ける家。家族が団らんし、心地よく同じ時を過ごせる家。
その望みをかたちにするために、古家を片付けた時に出た、がっしりとした丸太の梁や、細工が美しいらんまなどの古き良きものは大切に残し、修復して再利用しました。
南の通り土間へ抜ける風通しの良い茶の間。キッチンの北窓からは、田んぼを通る清々しい風が入ります。
「古家の片付けをしている間、座敷の縁側でひと休みしていると、とてもいい風が入ってくることが分かりました。片付けは時間がかかって大変だったけど、今から考えると、この土地の風向きを知る貴重な時間だったのかな、と思いますね。実はこの時の経験を、今の家の和室と趣味の部屋の『風の通り』に生かしてもらっています。」
打合せのために古家に伺うと、いつも風鈴がリーンリーンと心地よい音色を響かせていました。今回お邪魔した際も変わらず鳴っていて、それを思い出しました。
南北に続きの間を設けた間取りにしたことで、U様の家の風通しのよさは格別です。夏は南と北の窓を開け、ほとんどエアコンを使わず、自然の風で過ごしています。東や南の大きな窓にはすだれをかけて、暑い日差しを遮る工夫をしています。
「茶の間にエアコンはないんですよ。2階にも取り付けてない。奥の和室に1台だけエアコンがあるので、熱帯夜で寝苦しい夜はそこで『暑い人集まれ!』ってみんなで寝ます(笑)」
U様の家は、南側を一連の土間にして土間からそれぞれの部屋へ行き来できる造りになっています。家の中でも土足のまま出入りできる土間は、外のような役割も兼ね、愛犬たちのお気に入りスペース。
U様のご趣味である自転車を家の中へ運び入れ、手入れをしたり整備をしたり。冬期は窓辺でトマトの栽培や、植物の冬越しの場として活用しています。晴れた日は土間にあたたかい陽が当たり、どんなに寒い冬でも室温を10~20度に保つ快適な場所となっています。
「計画当初、土間はほんの少しのつもりだったんですが、社長さんがずーっとつなげることを提案してくれて、それはいいかも!ってひと続きにしたんです。土間はちょっと汚れているものでも気兼ねなく置けるし、いろいろな使い道があってこれは本当によかったですね。」
冬に撮った1枚。窓の外の雪を眺め日向ぼっこをする愛犬のクロちゃんとゴロちゃん。
茶の間には、差し造り(さしづくり)の吹き抜けに、薪ストーブが据えてあります。
「我が家の暖房はこれ1台です。吹き抜けがあるので2階まで十分暖かく過ごせています。子どもたちも大きくなって、寒ければ自分で火を起こして、薪をくべるようになりました。焚き付けの材料をやたら使いますけどね(笑)。今ではずいぶん上手になったので、もう安心して任せておけます。」
堀こたつのある茶の間。暖気が上がる吹き抜けは2階の廊下や部屋に窓を設け、開閉して暖かさを調節できる工夫がされている。
U様の家では、上へ上がる暖気の循環をよくするために、シーリングファンを取り付け、2階の廊下に扇風機を置いています。暖気が階段から下へ下りるように回して室温を調節しているそうです。2階は冬場、洗濯物がよく乾く絶好の場所になっています。
「うちは家族みんな寝るのが早いので、薪は夜も早々に燃え尽きますが、冬でも朝起きると茶の間の室温は18度くらい。どんなに寒い日でも15度以下にはならないですね。だから朝起きるのは全くつらくないし、パジャマを着たままあちこち動いています。トイレや脱衣場で「寒い!」っていうこともない。実家も薪ストーブを使っているのですが、昔の家なので冬場は室温が1度の時もあります。同じ暖房を使っているのに、気密断熱の差がずいぶんあるということでしょうね。」
スロープの向こうに見える車庫から、雨雪に濡れずに家に入ることができる玄関前の雁木。
天候の悪い日が多い上越での暮らし。U様は「雨に濡れて帰ってきた時に、そのまま家に入るのではなく、雨具や上着の雨粒をバッサバッサと払えるような屋根のついた玄関が欲しい」と希望されました。そこで雁木(がんぎ)を設けることに。車庫から雨雪に濡れずに玄関まで行ける通路に広い屋根をつけ、通路をゆるいスロープにしました。
「まさに!雨や雪を払える場所になっています。スロープは、自転車に乗ったままでも玄関まで行き来できるし、両親が体調を崩して車いすを使った時もゆるい 角度にしてもらっていたのでとても助かりましたね。」
今年の大雪の様子。道路から家までの通り道を除雪している息子さん。
そしてこの冬(2021年)は一晩で50~60センチの雪が毎日のように降り続く大雪に見舞われました。U様がお住まいの地域でも大量の雪が積もり、家から出られなくなったり、毎日除雪に追われたりと大変な思いをされた方がたくさんいらっしゃいました。
「下屋の雪を1回だけ下ろしました。なかなかこういった機会もないですし、経験しておくのも大事かなと思って、家族みんなでやりましたね。ちょうど自分たちも体が動く年代で、子どもも手伝えるくらいの年齢になったので、心強いです。家の周りは軒の出も深くて雁木もあるので、雪下ろしをしても歩くところは確保できました。それに基礎が高めなことと、屋根の向きや勾配の加減で、あんなに雪が降ったのに、どんなに雪が落ちても家の出入りに苦労することはなかったですね。すごいなと思いました。」
家族でつくった大きな雪だるま。
雪夜のろうそくの明かりは、雪国でなければ味わえない幻想的な風景。
高く積もった雪の回廊に小さな穴をいくつか堀って、夜にろうそくを灯して楽しんだそうです。
南側の雁木の下はまだ塗らなくても大丈夫。深い軒の出や雁木は強い日差しから家を守り、長持ちさせる働きも。
「家を建ててから、少しずつ手を加えて希望通りの家になっています」というU様。先日は外壁の木の下見板の塗装を、ご家族で行ったそうです。
「これから家をどのように維持していくかを考えると楽しいですね。庭に、小さい木を株立ち風に仕立てて楽しもうかなとか、中低木を育てたら風よけになるかなとか、部屋の窓の西日よけになるかなとか・・・木が、枝葉を増やして家とともに成長していく未来を想像するのも楽しいですよ。」
木立を抜けると見えてくる、ちょっと懐かしい趣の外観。枕木のアプローチはU様ご夫婦の手づくり。
「家は一番長く過ごす場所なので、私たちは『時間とお金をかけてもいいかな』と考えています。子どもたちも成長してお金がかかることもあるから、時々夫婦で『ちょっと高い買い物しすぎちゃったかね』なんて話をするんですが、やっぱり居心地がよくて、この家でよかった!と思うんです。
それに、すぐ傷んだり、リフォームの必要がでてきたり・・・と、度々お金がかかる家ではなくて、しっかりとした家を造ってもらったので、あとは自分たちで手間をかければ維持していくことができる。子どもたちも一緒に手伝って、『自分の住む家を守ること』を教えていきたいです。そして家族でいろいろなことを楽しみながら暮らしていけたらいいなと思います。」
そよ風が心地よい、庭を眺める広縁。
話をお聞きしている最中もお部屋にそよ風が通り抜け、風鈴の心地よい音色が響きました。
■営業 服部から
自然の力を生かし、自然と共存し、自然の恩恵を存分に受け、どんなことも楽しんでいるU様ご家族。自ら手入れをしながら、家も土地も大切にされている暮らしぶりはとても魅力的で、この地で暮らす一つの理想のかたちをみせてくださいました。
お話を伺って、ほっこりあたたかい気持ちになったひとときでした。
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